ゲーム理論

 

 

 

 

「囚人のジレンマ」

<状況>

私と共犯者の2人が犯罪をおかし逮捕された。警察はこの2人に自白をさせる為に、2人を別々の留置所に入れた。そして、それぞれの留置所を順番に訪れ、自白した場合には、刑を軽くするという以下の条件を提示した。

①もし、2人が共に黙秘をしたら、2人とも懲役2年になる。

②しかし、共犯者が黙秘をしたとしても、自分だけが自白した場合には、刑が1年になる。

ただし、共犯者の方は懲役15年となる。

③逆に共犯者だけが自白し、自分が黙秘をした場合には、共犯者は刑が1年になる。

ただし、自分の懲役は15年になる。

④2人が共に自白した場合、2人とも懲役10年になる。

2人はお互いが同じ条件が提示されている事を知っているものの、2人は別室にいるため、相談はできない。

<テーマ>

このとき、自分は黙秘すべきか、それとも共犯者を裏切って自白をすべきか

<解説>

自分も共犯者も、互いに裏切りあって10年の刑を受けるのに比較すると、互いに黙秘をしあって2年の刑を受ける方が得策なはずです。しかしながら、自分も共犯者も自分の利益のみを追求してしまうため、互いに裏切りあうという結末を迎えてしまいます。なぜなら自分は、以下の通り考えてしまうからです。

1. 共犯者が「黙秘」を選んだとする。
このとき、もし自分が共犯者と同様に黙秘すれば自分は懲役2年だが、逆に共犯者を裏切れば懲役は1年ですむ。
だからここは、「自白」をしたほうが得だ。


2.
共犯者が「自白」を選んだとする。
このとき、もし自分が黙秘をすれば、自分は懲役15年だが、逆に自分が共犯者を裏切れば懲役は10年ですむ。
だから「自白」をしたほうが得だ。





















以上の考え方により、共犯者が「黙秘」しようが「自白」しようが、自分は自白をするようがより得なため、自分は必ず「自白」を選択してしまいます。共犯者も同様の考えをするため、共犯者も「自白」を選択してしまいます。このように、2人はお互い「黙秘」を続けた方が得であるにもかかわらず、互いに裏切りあって10年の刑を受ける事になってしまいます。2人ともが合理的な考えをすることによって、全体としては「より損な選択」をしてしまうため、「ジレンマ」と呼ばれています。

このように、他のプレーヤーがどのような戦略を採用するかに関係なく、自分は常にある一定の戦略をとったほうが、得であるという戦略が存在する場合、その戦略を「絶対優位の戦略」と呼びます。

この囚人のジレンマのケースでは、自分にも、共犯者にも、「絶対優位」の戦略が存在します。それは、相手の行動に関係なく、常に、「自白する」ということです。そして、両者が、「自白する」という戦略を採用することが、今回のケースではもっとも得な戦略です。そして、双方は、10年の懲役という形で決着します。

このように、絶対優位の戦略が存在する場合、必ず1つの結論に達してしまいます。しかし、上記の表を見るとわかるとおり、両者にとっての最適解ではありません。両者とも、黙秘を選択していれば、双方2年で済ませることができたはずです。このようなケースで、この両者が黙秘を選択するのは困難です。私にしろ、共犯者にしろ、両者が相手を信じることが難しいからです。裏切られる可能性が否定しきれません。たとえ、事前に合意を取り交わしたとしても、最後まで相手を信じ切るのは容易ではありません。このようなケースは実際のビジネスでは十分に起こりえます。

このようなケースを取り除くためには、いくつかの方法があります。

(1)もしも、相手が裏切った場合はペナルティを課す契約を結んでおく

どちらかが、裏切った場合には、何らかのペナルティを課すことを契約として結ぶことで、ジレンマから抜けることが可能になります。裏切りにはペナルティを科すことで、裏切っても得をしないようにしておくことで、裏切ってしまおうという誘惑を抑制します。これは上記の「絶対優位の戦略」を無くすことを意味します。

(2)ゲームを複数回行う

囚人のジレンマでは当てはまりませんが、実際のビジネスでは、ゲームを複数回実施することによって、異なった行動を導きだすことが可能になります。

たとえば、お得意さまになってもらうことによって、目先の価格差を犠牲にしながらも長期的な利益の最大化を図るといったケースです。

囚人のジレンマでは、1回限りの取引について描いた例ではありますが、それでも既存のフレームワークでは描くことが難しい「他者の行動によって自分がどのように行動すべきか」を分析することが可能になっている点で、非常に有効な考え方であるといえます。



最終更新 ( 2010/05/11 14:15 )