不況で飲食業界全体が業績不振にあえいでいる中、連結経常利益90億600万円(前年同期比31.4%増)と中間期ベースで最高益を更新するという好業績で一人勝ちとなっているのがマクドナルドです。好業績となっている要因はいくつもあると思いますが、その中でも、クオーターパウンダーは顧客単価の向上に貢献し、好業績を牽引する立役者となったと言っても過言ではありません。クオーターパウンダーの成功要因について解説します。
ヒット要因を考察する前に、クオーターパウンダーの歴史について少し触れておきたいと思います。
クオーターパウンダーは、世界のマクドナルドで販売されているレギュラーメニューであるにも関わらず、日本では1970年代に新商品として投入されたものの、そのボリュームがあだとなったのか消費者には受け入れられず、わずか数年で姿を消した商品です。
(※沖縄市や厚木市など、米軍基地内やその周辺店舗の一部では継続して販売)
そんなクオーターパウンダーが大ヒット商品となり、再びスポットライトを浴びることとなります。
それでは、クオーターパウンダーはどのようにしてヒットしたのでしょうか?
それは、
①消費者にボリューム・カロリーのある商品を購入する素養を身に付けさせた
②商品のプレミアム・ブランド化し、商品イメージを向上させた
の2点にあると考察します。
①消費者にボリューム・カロリーのある商品を購入する素養を身に付けさせた
世間では、健康ブームが長い間続いています。
最近でも『メタボ』や『スローフード』などなど新たなキーワードが生まれては消えていくまさに健康ブーム最盛期といえるのではないでしょうか。
そんな中、クオーターパウンダーを単に数ある新商品のひとつとして投入しても、誰も見向きもしなかったでしょう。
そこで、マクドナルドが採った施策が、『MEGAマックの投入』です。
健康、健康とうるさくなっている世間に対し、カロリー・ボリュームを目玉とした『MEGAマック』を投入するという、あえて世の中のブームに逆張りし、斬新なセールス・マーケティング活動を実施しました。
その結果、本当は思いっきり食べたいという潜在ニーズを掘り起こし、若い世代を中心にボリュームのあるものを好んで食べるというメガブームを巻き起こしました。
ここで、ポイントとなるのが、あえて最初からクオーターパウンダーを投入しなかった点です。
たとえ、ブームを巻き起こしても、一過性のものになる恐れがあり、長い間定着する商品を作り出すまでには至りません。またそれでは、中長期的に顧客単価UPへ貢献することはできません。
あくまでも、クオーターパウンダーが定着商品となり顧客単価がUPすることが目的であったと考えると、消費者にボリューム・カロリーのある商品を購入する素養を身に付けさせる役割は、ボリューム・カロリーを見た目で分かりやすく表現している『MEGAマック』に譲ったのだと思います。
②商品のプレミアム・ブランド化し、商品イメージを向上させた
2008年11月、東京の2箇所にて、マクドナルドの社名やロゴなどを一切取り除き、クオーターパウンダーしか販売しないアンテナショップをオープンしました。
アンテナショップでは、赤と黒の2トーンカラーで内装を統一し、通常のハンバーガーショップとは違う高級感を演出しています。
また、2店舗でしか食べることができない謎のハンバーガーが話題を呼び、毎日行列ができ、報道されるまでになっていました。
(のちに、マクドナルドが人材派遣会社に依頼し、行列を演出したとの報道があり、マクドナルドも事実を認めていますが、商品の注目度は結果として上がったといえるでしょう。)
マクドナルドの『安いがあまりおいしくない』といったネガティブな先入観を払拭すると同時に、限定店舗でしか食べることができないといったロケーションを作り出すことにより、クオーターパウンダーのプレミアム化、ブランド化されたのです。
このプレミアム化・ブランド化できた背景には、クア・アイナを代表とするプレミアムハンバーガー(値段は高いがすごくおいしいハンバーガー)ブームがあったといえます。マクドナルドとは反対側にあるブームへうまく乗ったというわけです。
以上、①→②という順序でセールス・マーケティングを実行することで、クオーターパウンダーは、ヒット商品となり定着メニューさらには人気メニューとなりました。
この事象から受け取れる示唆は、
『ブームを作り出すだけでも、プレミアム化・ブランド化させるだけでもうまくいかない、顧客に商品を購入する素養を身に付けさせ、価値があると思わせて購入させるための仕組みづくりこそ重要だ』
ということではないでしょうか?
【さらに掘り下げて】
また、クオーターパウンダーの投入をめぐっては、注目すべきポイントがもう一つあります。それは、クオーターパウンダーが投入されたことにより「ビックマック」も販売量を増やしている、という事実です。
これは、クオーターパウンダーという高額で、高カロリー商品が投入されたことにより、マクドナルドのメニューの中でビックマックが中間に位置し、顧客心理として、お手ごろ感を持つようになったからだと考えられます。
この心理を利用した戦術が小売の多くで採られています。たとえば、松と竹しかメニューにない場合には、ある程度の人が竹のメニューを選びますが、松と竹と梅があると、梅を選ぶ人の数は格段に減るという事象が多くのお店でみられます。
クオーターパウンダーがもたらした副次的な効果ですが、明らかにマクドナルドはクオーターパウンダーを投入することで、意識的にビックマックの販売量を増やそうとしているようです。それはマクドナルド社のIR資料にも書かれています。非常にわかりやすい資料ですから、確認されることをお勧めします。
http://www.mcd-holdings.co.jp/pdf/2009/2009half_financialdata.pdf
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