シナリオ・プランニング

 

将来起こりうる事業環境の変化について数パターンのシナリオを構築し、そのシナリオへの対応策、戦略を作成するのがシナリオ・プランニングです。シナリオ・プランニングはもともと・・

 

 

 

 

 

■概要

将来起こりうる事業環境の変化について数パターンのシナリオを構築し、そのシナリオへの対応策、戦略を作成するのがシナリオ・プランニングです。シナリオ・プランニングはもともと軍事的な用途で開発されていたものを企業の事業計画策定、戦略立案に応用したものであり、1970年代に発生した石油危機に対して、ロイヤル・ダッチ・シェル(以下シェル)がシナリオ・プランニングの活用により競合企業に比べて首尾良く対応し大きく業績を伸ばしたという実績により脚光を浴びました。通常、企業や組織の事業計画、及び戦略は、直近の実績やトレンドをベースに策定されますが、シナリオ・プランニングは不連続な変化が起こりうる不確実性の高い環境での活用を想定したツールです。

シェル以外にもPG&E、モトローラ、国内では新日本石油などがシナリオ・プランニングを活用しています。また、1990年代以降は政府系組織、機関においても活用が進んでいます。

■シナリオ・プランニングの特徴

シェルは30年以上にわたってシナリオ・プランニングを活用した経験から、組織にもたらす下記5つの効果を発見しました。

思決定の質が向上する

複数の起こりうる未来を想定し、どのシナリオにも耐えうるより確実なプロジェクトを採用することによって意思決定の質が向上します。

ンタル・モデル(個人が固定的に持っている世界観)が拡大され、発見を促す

シナリオ構築において、まず確定要素と不確定要素を区別するというプロセスがあります。1970年代初期の石油業界においてシナリオの対象となったテーマは石油の価格でした。需要と供給の問題も含め、石油価格を決める要素について詳しく調べていくと、供給における産油国政府の出方は新しいシナリオを創るに足る不確定要素であると結論づけられました。そして1973年「石油危機シナリオ」が現実に起こります。伝統的な予測手法に比べてシナリオ・プランニングが「考えるクセ」を企業にもたらし、メンタル・モデルが拡大されることが発見されたのでした。

織の認識力が高まる

シナリオ・プランニングは複雑な現実をわかりやすいストーリー・ラインに置き換え聴き手に伝えることにより、組織内でメンタル・モデルの共有を促し、さまざまな兆候を読み取る能力を組織的に備え、数々の不測の事態にも対応することができるようになります。

ネジメント力が強化される

シェルでは意思決定において、シナリオをベースに各種プロジェクトを評価することを義務付けたところ、経営トップが直接的な指示ではなくシナリオを使って決定に影響を与えることができるようになりました。意思決定に関する暗黙のルールにシナリオを使い、プロジェクト案が提出される前からプロジェクトの開発に影響を与えることができるようになりました。

ーダーシップツールとして活用できる

シナリオがプロジェクトの開発に大きな影響を与えるため、マネジメント層はシナリオの創出に力を注ぐことになります。そしてシェルでは経営トップがリーダーシップを発揮するためにシナリオ・プランニングを使っています。

しかし、全社的なシナリオと直接的にはつながらない部門ごとに創られるシナリオが存在して活用されているように、シナリオ・プランニングは規格化された官僚的なプランニング手法としてではなく、組織のメンバーのメンタル・モデルを拡大する思考のプロセスとして位置づけられています。

また、その他下記のような特徴についても提示されています。

事業環境変化を"待ち構える"ことができる

シナリオ構築のプロセスで自社ビジネスが直面するさまざまな不確定要因について認識することにより、認識した事象に対する行動や、心構えの準備ができます。

また、シナリオ・プランニングを通じて仮想シミュレーションを繰り返すことにより、「未来経験」を重ねることができ、危機発生時にも落ち着いた対応が可能です。

危機管理のみならず、事業機会創出にも活用できる

本質的には、シナリオ・プランニングは危機管理対策の代替案を用意するというだけのための手法ではなく、顧客ニーズを掴みきれず競合他社がシェアを落としている、あるいは

自社ビジネスと接点のない市場に新規参入といった機会にも注意し、自社ビジネスに多大な利益をもたらし得るシナリオ展開を想定しておくこともできます。

過去に縛られずに考える力が組織全体に広がる

シナリオ・プランニングは、基本的には過去を振り返らず未来を考えるものです。

現実性と意外性を兼ね備えた有意なシナリオを策定するためには、自分たちが今まで考えていたものの考え方や事業環境の見方、ビジネスの勝ちパターンといった固定観念を積極的に破壊し、通常考えたこともないような発想を常に強いる必要があります。

企業経営者や管理者は、シナリオ・プランニングのプロセスを経験することで、こんなことは起こりえないというような凝り固まった考えを断ち切り、過去に縛られない、創造性豊かなマネジメントができるようになります。

また、シナリオ・プランニングは、企業幹部のみならず組織全体が学習し進化していくためのトリガーにもなります。シンプルで人を惹きつけるストーリー性をもったシナリオを組織内部で共有することができれば、社員個々人が自社の将来や事業環境の変化について自分なりに考えるようになり、結果として各社員が持つ自分の与えられた仕事の目的や

モチベーションといったものを同じ方向性に意識付けることができるようになると同時に、

過去に捉われずに考える力が組織全体に広がります。