
MECEという言葉を知っているでしょうか。MECEとは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略です。
ビジネスには様々な要因が複雑にからみあっています。それらを仕分けして整理することが、現状を分析したり、打ち手を立案したりする際に求められます。例えば顧客を「新規客とリピーター」に分けると現状分析に示唆があるかもしれません。あるいは来期のプロモーションを「広告宣伝と販売促進」に分けて検討すると皆の意見が出やすいかもしれません。
その仕分けや整理が上手に出来ているかどうかのモノサシとして著名なものが、MECEです。発音は、ミーシーもしくはミッシーとカタカナ表記されます。
合計4文字中、前半の2文字ME(Mutually Exclusive)を直訳すると「相互に排他的」となります。我々が通常使う日本語では「ダブリが無い」と言い換えられます。後半の2文字CE(Collectively Exhaustive)を直訳すると「集めたらそれで全部になる」となります。通常使う日本語では「モレが無い」と言い換えられます。MECE=「ダブリ無くモレ無く」というわけです。
理解促進のために、MECEに分けることに失敗した例を2つ紹介し、それがどんな「困った事態」を巻き起こしかねないかを解説しましょう。テーマはパソコン購入の際の評価基準です。
【例1】
●パソコン購入の際の評価基準
性能/外見/ハードディスク容量/納期/価格
この例では、性能の一要素であるハードディスク容量が並列で並んでしまっており、ダブリがあります。ME(Mutually Exclusive)では無いわけです。
ダブリがあると何がいけないのでしょうか。まず、聞き手や読み手が「あれ?同じようなものがまた出てきた。」と混乱します。また上記の例だと、本来は1/4の重要性しか無いものに、2/5の労力をかけてしまうことにもなりかねません。例えば、Aさん~Eさんの5名に上記5要素の深掘り調査を割り振ったとすると、Aさんのレポート(性能)とCさんのレポート(ハードディスク容量)には重複があり、労力がムダになるわけです。
【例2】
●パソコン購入の際の評価基準
性能/外見/納期
この例では、物品購入の際に極めて重要となる価格という要素が抜けており、モレがあります。CE(Collectively Exhaustive)では無いわけです。
モレがあると何がいけないのでしょうか。一番大きなリスクは、判断を誤ることです。上記の例だと、価格という要素を忘れて購入決定してしまった後に、その値段が市場価格の3倍ものボッタクリだと判明したといったケースが相当します。また最終的判断の前にモレに気付いたとしても、それが手戻り(効率低下)を引き起こしてしまいます。
何かを仕分けて整理したら、それがMECE(ダブリ無くモレ無く)になっているかをチェックしましょう。ただし、モレに関して厳密に言うと、「本当にこれで何もモレてないか」は神のみぞ知るという面も否めません。だからといって諦めてしまうのではなく、同僚や上司などにも見てもらってモレやダブリを出来るだけ避ける努力をすると良いでしょう。また、3C、4P、PESTといった既にMECEが確認されている既存フレームワークを活用するのも1つの手です。
MECEを実現することで、意志決定の誤りを避けたり、経営資源を効率的に活用しやすくなることを既に解説しました。また、コミュニケーションにおいてもMECEは大きな意味があります。まず理解を促進する効果があります。それによって論点が明確になり、建設的な反論や健全な議論が促進されます。平行線の堂々巡り議論が避けやすくなるのです。さらには決定事項に対する納得感の形成にも効果があります。
最後にMECEにこだわり過ぎることの弊害を2つ述べます。1つ目はMECEに分けることに力を注いだからといって、それがビジネスの成果につながらない場合があるということです。言い換えるとMECEとは必要条件であるものの、十分条件では無いのです。例えば顧客を性別と年齢で8個のセグメントに厳密なMECEに分けたからといって、それぞれのセグメントでのニーズの違いや購買行動の違いが特に無いのであればビジネス上の意味はありません。むしろ、厳密なMECEとは言い難い「テキパキ客とノンビリ客」に分けるほうがニーズや購買行動の違いが明確になり、実務上の意味があったりもするのです。
2つ目は厳密なMECEを実現すると、それが実務に弊害をもたらす場合もあるということです。例えば人間を男女に分けるのは厳密なMECEではありません。両性具有、性同一性障害などの方も希におられます。しかし、男性向け商品と女性向け商品を検討している際に、「それではMECEでは無い!両性具有の方向け商品と性同一性障害の方向け商品も発売せよ!」となったとすると、社会的意義はあるかもしれませんが、ビジネスとしては失敗をもたらす可能性が非常に高いわけです。また「厳密なMECEでのためには、必ず『その他』を入れなければならない」と主張する人がいますが、考える人の思考停止を招いたり、読み手や聞き手の勝手な誤解を招いたりし、実務への弊害につながる可能性があります。
たかがMECE、されどMECE。MECE教にはまるのではなく、MECEという概念を実務に役立てる姿勢が重要です。
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