イシュー


「イシュー」とは、一般的には「論点」「課題」「問題」といった意味で利用されることが多いですが、ビジネスにおいては、「考えたり、論じたりすべきテーマ」という意味合いで使われます。また、ビジネスの多くの場面で、「イシューを特定する」といった使われ方がされます。この「イシューを特定する」とは、「何を考えるべきか」「何を論じるべきか」を熟考し、「考え、論じる目的、ポイントをしっかりと言語化すること」を意味します。



「イシュー」の特定が見当はずれでは、どんなに精緻に論理を組み立てても意味がありません。また、「イシュー」が特定されていないと、「今、何を考えるべきか」「今、何を議論すべきか」が不明確になり、考えがまとまらなかったり、議論が迷走したりします。特に、複数のメンバーで議論をする場合は、「イシュー」を明確にし、この「イシュー」を共通認識として議論の参加者全員が常に意識しない限り、効率的な議論がなされません。

「イシュー」を特定する際に非常に重要なことは、「イシュー」は「主語+述語」といった文章で定義するということです。たとえば、「イシュー」を「会社の売り上げ」とするのではなく、「どうすれば、会社の売り上げは増えるか」とした方が、考えなくてはいけないことが明確になります。「会社の売り上げ」とした場合、売り上げの構成要因を調べるのか、増加あるいは減少している理由について討議するのか、売上増加策について話せばいいのか、テーマが明確でないため思考が発散してしまいます。一方、「イシュー」を「どうすれば、会社の売り上げは増えるか」とすると、増やすための対策を考えればよいことになり、より効率的に考えることができます。

数人で議論するような場合は、議論の最初に必ず「イシュー」の特定を全員で行った上で、皆がそのイシューを忘れないで議論を進めていくことが重要になります。そのためには、皆に見えるようにホワイトボードに記したり、資料の冒頭に記載したり、といった工夫が必要です。そうすることで、議論が脱線しかけた時にも「イシューに戻しませんか?」といいやすくなります。このように、「イシュー」を定義し、関係者に会議の冒頭で確認する癖をつけることで、議論が脱線する可能性を減らすことができます。
個人で思考を巡らす場合も、「イシュー」をしっかりと特定することが重要です。何かしら問題が発生すると、「イシュー」を特定しないまま、現在起きている事象の構造をフレームワークで分析したり、外部環境を分析したり、そこからうち手を考えてしまいがちですが、「イシュー」が異なると、見なくてはならない外部環境も変わってきますし、そこから導き出されるメッセージも異なってきます。あくまでも、「イシュー」が特定できてから「ピラミッドストラクチャー」を形成して論理を組み立てていく必要があります。そのため、ピラミッドストラクチャーを「イシューツリー」と呼ぶことがあります。

また、マーケティングにおいては「イシュー・ブランディング」と呼ばれるマーケティング手法があります。「イシュー・ブランディング」とは、商品ブランドを消費者層に直接的に伝えるのではなく、イシュー(問題や課題)を世の中に提起し社会性のあるテーマとして広めてから、そのソリューション機能を持った商品の関心を高める手法です。成功したケースとして、花王の「ヘルシア緑茶」があります。花王は、まず初めに現代サラリーマン共通の問題である「肥満」をプレスリリースでマスコミに向けて発表し、商品そのものではなく、その商品が解決する「イシュー」を世の中に広め、商品の需要を喚起しました。次に、需要が高まったところを見計らい、解決策としての商品「ヘルシア緑茶」のマーケティング戦略を本格展開した結果、生産が追いつかないほどの大ヒット商品となりました。また、SaaSベンダーの「Salesforce」社も、ASPサービスが当時抱えていた「通信コストの割高感」「サーバー保守の煩雑さ」等課題を世の中に発信して問題意識を喚起し、そのうえで、SaaSを広めることで、ビジネスの成功を収めました。